サーチライトのつもりだ!

沖野のブログです。続けられるか?

さよならの速さで顔を上げて

サーチライト沖野です。

 

カント純粋理性批判で一本を書こうとしていたときに友人と通話をしました。

友人にブログの感想を聞いたら展開が目まぐるしいといわれ、自分を見失ってTwitterをする沖野。

そこにこのようなretweetが回ってきました。

 

 

そこで思いつく。一本これで書こうと思う。

ストーリーなら展開が飛ぶ可能性もないだろう、という計算だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

こちゃこちゃ書こうと思います。さよならの速さで顔を上げて

舞台、整備された住宅街

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~~~~~~♪

五時 に なりました  

よいこの 

みなさん は 

おう ち にかえり ましょう......

 

ゆうやけこやけ

これを聞いたっていつもはなんてことないのに、今日は切ない気持ちになった。

小さな川のほとりを一人で歩く。

11月1日。私の最後の日だ。

 

近くでキャンキャンという声がした。見たら小型犬が飼い主に手を引かれて吠える。

鼻を肉じゃがの匂いがくすぐった。

何も変わらない。何も変わらない。

 

この日は何も起こらないと最初から占星術のカードには書いてあった。

占星術のカードというのは母が私が生まれたときに大枚をはたいて購入したカードだ。

母のくだらない宝石箱のなかに、布でくるまれてそれはいつも入っていた。

私はそれを後ろめたい気持ちで読む。

なかば軽蔑した、そして半ば生まれ変わりたい尊い気持ちで読む。

 

川は静かに流れた。

この川のほとりを裸足で歩く。

それは私が昔からずっとしたいことだった。

歩いてゆく。歩いてゆく。

川は海につながって海は川となり雨となり世界に還る。

このまま海にいけたらどんなに良いことだろうかと私は思って、そっと帽子を取り川に投げた。

 

ぶわあっと風が吹く。

 

赤いストローハット。

 

一瞬で帽子は宙に浮いた。

美しい瞬間だった。世界が夕どきの藍で満ちていた。人影のグレー。

そこら中から祝福された秋の匂いがした。遠いほうへ、帽子は飛んでゆくかに見えた。

 

赤いストローハット。

 

美しい海の向こうに何があるんだろうか。

私はうたう。

 

赤いストローハット。

 

いつか海の向こうに何があるんだろうか。

 

赤いストローハット…。

 

 

しんしん、静かにコオロギが鳴いている。

気づけば空は暗く、

ストローハットは

汚い川の泥にまみれ動かなくなっていた。

 

fin