サーチライトのつもりだ!

沖野のブログです。続けられるか?

「Scripta」は紀伊国屋書店のアイデンティティ

 

青春へのサーチライト沖野です。

それでは今日も元気にいってみよう。

 

今回の本と評価

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scripta winter 2020 / 紀伊國屋書店出版部 <電子版> - 紀伊國屋書店ウェブストア

「scripta」

著者‥紀伊國屋書店出版部

出版社‥紀伊國屋書店

 

面白度 ☆☆☆☆

読みやすさ ☆☆

テーマの深さ ☆☆☆☆☆

こんな気分のときに読みたい:新しい風を吹き込むものに出会いたいとき

 

「Scripta」はどんな本なのか

scriptaは紀伊國屋書店出版部によるフリー冊子だ。

年に4回刊行され、各界の著名な文化人によるエッセイがまとめられている。

ちなみにScriptaは「書かれたもの」を意味するラテン語

 人文がメインだが"書かれたもの"を題とするだけあってテーマは多岐にわたる。

 

以下に紀伊國屋公式HPより目次を引用しよう。

 

 

都築響一は著名な写真家なので聞いたことがある人が多いだろう。

sprictaの内容はそれぞれが深く重い。

じっくり腰を据えて読みたい文章ばかりが並ぶ。

はじめて手にとったときは価格が無料であると知り驚いた。

 

これは紀伊國書店にしか作れない。

 

だが当然ボランティアなはずもなく、

原稿料はじめ莫大な予算が組まれているであろう。

無料配布には意図があるはずだ。

 

 

 

「本を売る」最適な方法って?

今の出版業界 

ここでグラフを見よう。

言うまでもないが出版業界の売上は年々落ちている。

 

「出版業界 売上表 after:2020-01-01」の画像検索結果

引用元:

https://unistyleinc.com/techniques/1360

 

 

2018年と2019年で売上を比較すると、

電子出版は伸びているが紙の市場は落ちているのが分かる。

大手書店はどのような対策を取っているのだろうか。

大手書店の戦略を見ていきたい。

 

ジュンク堂vs紀伊國屋書店

手軽なのでHPを比較した。

 

有名な書店でぱっと思いつくのが「丸善ジュンク堂」だ。

HPに飛んでみる。

https://www.maruzenjunkudo.co.jp/maruzen/top.html

 

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ヘッドバナーにあるアプリhontoはオンラインショッピングだけでなく書店在庫の取り置きができる。

概要にはハイブリッド型総合書店hontoとある。

 スマホで調べてもらい購入へのフットワークを軽くする狙いだろう。

 

 

紀伊國屋のHPと比較してみよう。スマホユーザーはあとでモバイルからも見て欲しい、丸善とは顕著に違う箇所が分かる。

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見た瞬間にいくつか気づいたことがあった。

 

ひとつは「オンラインショッピングを押し出している」こと。

ふたつめは「イベントの数と種類が多い」こと。

 

三つめは「サイトがダサい」ことだ。

 

サイトがダサい。見づらい。

見たらモバイルもダサかった。

webページはPCとモバイルで表示が違うので参考までに載せる。

 

 

紀伊國屋書店モバイルビュー

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携帯から見たページトップ

 

 

より見づらくなっている。 

ログインメニューが最初に来た。

PCよりも一見さんお断り感が増した。

 

よく見るとPC画像右のメニュー部分があたまに来ただけのようだ。

モバイルビューがどうでもいいのだろう。 

しかしwebページへのアクセスは基本スマホユーザーだ。

紀伊國屋書店は大丈夫なのか?

不安になってきたので業績を調べた。

 
 
 
紀伊國屋書店は売上が業界トップ

 

紀伊國屋書店 店舗推移」でヒットしたのがこちらの記事。

https://booktrip-japan.com/media/publishing-industry/

 

画像を拝借した。

 

 書店売上ランキング

 

 

トップだった。

ちなみに店舗数だが丸善ジュンク堂が93店舗、紀伊國屋書店が63店舗だ。

ソース元:https://kot-book.com/number-of-book-stores/

 

ちょっと待ってと私は思った。

あのサイトでどうしてここまで売り上げたのか。

 

 

その理由に思いを巡らせる。

そこでふと、ある本屋を思い出した。

 

 

 

 

夢の国としての本屋

 

 

私の好きな本屋さんを紹介する。

「SHIBUYA BOOK SELLER」

 

www.shibuyabooks.co.jp

 

 

普通の本屋さんにない本ばかり売っている。

店内には各テーマ事に本が分けて置いてある。

 

入って手前はマガジン。

左手に建築と写真。

左奥は旅行と料理。

 

右手にはデザイン論と哲学。

その奥に現代文学と詩がある。

 

だがほとんど私はそれらに立ち寄らない。

レジから、ひとつ通路を行った先に4×11マス平積みの広いコーナーがある。

すべて文庫。ジャンル指定はない。

変な死に方をした歴史上の人物をまとめた「偉人たちのあんまりな死に方」とか、

水木しげるの書いたハイルヒットラー伝記のコミックとか、

糸井重里のエッセイ書とかが置いてあったりする。

 

私は今挙げた3冊は買っていない。

買っていないけれどすぐに出てきた。

とてもSPBSらしいラインナップだからだ。

 

思い出していたらまた行きたくなった。

この前みた絵本「バウハウスって、なあに?」が欲しいからだ。

 

まるで敏腕編集者の本棚のようだと思う。

流行に敏感で、知恵が深く、自分の持っている芯からまったくブレることがない。

 

 

 

突然だが 

恋人に「金閣寺」をプレゼントしないといけない状況になったとする。

もちろん精神的な意味だ。

その金閣寺はメルカリで購入したものであってはいけない。

 

君は婚約者の親に会うときにジーンズを履きたいか?

いかんいかん、見栄えしない。

 

「人生のキー」と呼べるような格式高い本は百貨店の本屋で購入したい。

きちんとした身なりで行くべきだ。

紅を差し、スニーカーじゃなくハイヒールで行くべきだ。

 

 

 

 

そこであるからこそ「そこへ向かう」。

それが今回『金閣寺』を現地で購入した理由だ。

 

 そこはロイヤリティとブランド力のある書店。

私にとってはジュンク堂が挙げられる。

長い人生に欠かせない書店だ。

 

対してSPBSは金閣寺の購入候補にならない。

もちろん在庫はある。

だが私は SPBSに夢を見ているのだ。

人生のキーを買ってドアを開けるのじゃなく、

新しいドアを買いに行きたい。

 

知らない本が欲しいのだ。知らない本とそれを好きな自分だ。

 

 

 

夢の国と書いた。

ディズニーランドはどちらかというとジュンク堂に寄っている。

「そこでしか分からないあの"楽しい"という感覚」を求めてみんな行く。少なくとも私はそう思う。

しかし楽しいは一種の「我を忘れる」状態だ。

 

そういう意味でディズニーはSPBSとも似ている。

自分の知っているはずじゃない自分に出会える。我を忘れるとほぼ同義といえるんじゃないか。

 

以上から気づいたが SPBSはコーチ、もしくはコンサルタントだ。

あたなの知らないあなたはこうですよ、と提案してくる。

 

それでいったらディズニーは暴力だ。

一瞬も間を置かずに認知をうばってくる。うばって、目が覚める非日常に叩きこむ。

 

もしかしたらディズニーは最高の本屋かもしれない。

 

というのは冗談。

だが最高の本屋はディズニーを目指すべきだ。

ディズニーはアトラクション、本屋は紙、媒体は違ってもコンテンツは「体験」だ。

 

HPにもあるが紀伊國屋書店は「紙の本」にこだわりが強い。

気持ちは分かる。

それもまた読書「体験」の本質面ではある。

しかし、受け身の販売型からどのような形にせよ能動的な販売に舵を切るべきだろう。

 

 

 

 

 

紀伊國屋書店のscriptaは彼らのアイデンティティ

 

最後に話を紀伊國屋書店に戻して締めくくろう。

 

書店は物理的にテーマパークにはなれない。

ディズニーをはじめとするテーマパークにはアイキャッチなビジュアルが満ち満ちている。

己を示すものには事欠かない。

他にもディズニーをディズニーたらしめている箇所は多くあると思う。

音楽、接客、フード……それら全てがひとつの価値観に沿ってまとめられているんじゃないだろうか。

 

それが書店には見えにくい。

言わずもがなだがどの本屋も基本的にビジュアルは同じである。

雰囲気も店舗ごとにバラバラだ。

 

 

紀伊國屋書店はscriptaで自身のアイデンティティを示した。

もしくは示し続けている。

 

 

私にはそれが、Googleマップに刺さった赤いピンに思える。

 

ピンは私の頭の中でチカチカと存在感を明示する。

 

紀伊國屋書店、ここにあり。

そう光っている。

 

 

 

www.google.co.jp