青春へのサーチライト沖野です。
それでは今日も元気に行ってみよう。
今回の本と評価
早川書房刊行
平鳥コウ著
「JKハルは異世界で娼婦になった」
面白度 ☆☆☆☆☆
読みやすさ ☆☆☆☆☆
テーマの深さ ☆☆☆☆
こんな気分のときに読みたい:軽い気持ちで活字に触れたい時
※本作はweb公開されているため無料で読めます
link:
https://novel18.syosetu.com/n4381dp/
「JKハル」はどんな本なのか
まずはあらすじ抜粋しよう。(文庫背表紙より引用)
普通の女子高生・小山ハルは、ある日交通事故に巻き込まれーーー気づくと異世界に転移していた。
生活のため酒場兼娼館『夜想の青猫亭』で働くと決めたハルだが、
男尊&女卑の異世界では嫌なことや理不尽なことがありすぎた。
同じく現実世界から来た同級生の千葉。
娼館仲間のルぺやシクラソ、ハルに思いを寄せるスモーブと出会い、異世界に溶け込みはじめたハルを待つ過酷な運命とは……。
絶賛を受けた異色のウェブ小説、文庫化
きっちり200文字。早川書房さすがとしか言えない。
JKハルは元々「ネット私小説」だった。
知っている人もいると思うサイト「小説家になろう」で連載されていたものだ。
ふんだんにライトな短文でまとめられているし、下ネタも入る。
まず出だしから下ネタ。
避妊具がペースト状の草で「草生えるんですけど」といった会話からスタート。
ここではネタバレをするつもりはないぞ。
何が言いたいかというとJKハルは「読みやすい」ということだ。とっつきやすい。
どこから読んでも読みやすいし、世界観に引き込まれる。
ライトノベルやweb小説の特徴が生きているわけだ。
JKハルにはもう一つ特徴がある。
「ずっと読んでいられる」ということだ。
本棚に難しい本を並べがちであり、その影響で本が読めなくなったのが私だ。
娯楽小説の中もたくさん手にとる。けれど最後まで読み切れたことがない。
「気に入らない物語小説」「気に入っている物語小説」世界はこの2つでできている。
しかし「気に入らない物語小説」は多いのが現状だ。
「面白く読める」とは何?読める本の特徴は?
「クオリティの低い小説」はおそらく書店で目にすることはあまりないはず。
しかしそれでも本には「気に入らない」「面白く読める」という事案が起こる。
正直にいうと自分が「面白く読める」本は一握りだ。
ではその共通項は?というと
以下の3点に分けられる。
1.作者の文化背景と価値観がマッチングすること
2.驚きがあること
3.活字レベルがマッチングすること
ひとつひとつ説明していこう。
最初に要素からはじめて「面白く読めるとは何?」は最後に伝えようと思う。
小説家の客観、読み手の主観
1について。
説明をする前に小説に見受けられる観念構造の話をしようと思う。
観念構造……ものの見方に関して沖野がつくった造語。
[あるものについていだく意識内容-観念]と[諸要素の依存・対立の関係のあり方-構造]の造語。
「主観」と「客観」というものがある。たとえばこのブログで「〜と思う」が主観で、「普通は〜」が客観だ。
「牡蠣は生が一番美味しい」が主観で、「牡蠣を食べすぎてはいけない」が客観だ。
そもそも小説というのは作者の理性ではなく感情が書く。
よって作家の心象や生活背景が必ず入り込む。(又吉直樹の「火花」なんか良い例ですね)
私は日本の何人かの小説家が好きになれず辛かった時期がある。
今私は重松清の小説を頭に思い浮かべている。中学受験の影響で全く好きになれなかっただけで彼は悪くない。(本屋に行っても萩尾望都さんや吉本ばななさんなどが多くどれを読んでも私には楽しめなかったのでしんどかった)
今から考えると、日本作家特有の「学校の閉塞感と私」みたいな空気が似あわなかったんだと思う。
補足)合わない作家の本を読むと作家の人生観が見えてくる。
例えば大昔の日本小説を読むと当たり前のような男尊女卑にでくわした、としよう。
特筆したいがその場合、作者はそれを「自分の価値観の範疇だと思っていない」。
その事に気づいた瞬間、物語は醒める。
なのでオールマイティーに愛される作家はもとから「当たり前」を疑う性格なのではないかと思う。
そういう人の文章は、読んでいてクセがない。
これが第1条件。
驚きとは「既成概念を超えること」
次ははこちらから。
芸術からは逃げられない。
毎日大量の芸術が降ってくる。
飽きてしまう芸術、素晴らしい芸術、素晴らしいけど二度と見られない芸術、様々に。
シャワーのように芸術を浴び続ける中で、「玉」と「石」が分かれてくるはずだ。
素晴らしい芸術、模造品のような芸術、一生残る芸術。
その境目とは何だろう。答えはズバリ「驚き」だ。
素晴らしいマンガ、素晴らしい音楽、素晴らしい建築物、見た瞬間触れた瞬間に「びっくり」する。
驚きというのは「自分の知っていたものが知らなかったものに変化すること」だ。
絵の展覧会でよくあるのだが、「この画家はこんなに素晴らしい」という前情報のために見に行って面白くないということがある。
不勉強ももちろんだが、想像が逞しすぎたのだ。
自分の持っている「生活への感触」。
今見えて暮らしている世界の認識を、ぱぁっと打ち砕くように新しくするのが「驚き」だ。
その驚きを備えたのが「名作」だ。
ちなみに名作は客観ではない。
もちろん万人の名作も、ある。
しかしあなたの名作と私の名作がある。(素晴らしいことに!)
個人の驚きにどこまでそぐうのか、それが「面白く読める本」の第2の条件である
活字レベルでマッチングするということ
私はハイデガーが読めない。
難しいからである。
逆に絵本以上ハイデガー未満の本ならいくらでも読める。(下限はない。)
それが活字レベルだ。
挙げた例が物語小説でなくて恐縮だが、作者の言語感覚にどれだけついていけるかで読み進められるかが決まる。
このJKハルは私にとって一番読みやすい文体だった。
重要なこともそうでないことも軽いノリで簡単な言葉で話す。
ダニエル・キースの「アルジャーノンに花束を」に印象的なシーンがある。
主人公チャーリーは手術でIQ185なった元知的障害者だ。
高知能になって、障害学習クラスで指導をしてくれていたアニスという女性と付き合うが、アニスにこんなことを言われる。
「あなたの…言うことは難しすぎるわ。数式とか、なんたら理論とか…。いいえ、私だってあなたの話についていこうと一生懸命努力した。ラテン語のクラスにも通い始めたし話に出た文献も読んだ。でもさっぱり。ねえ、お願いだから、そんな"哀れそうな目"で見ないで!」
言語感覚と言うのは本人の無意識で決められていく。
不協和音を生むことが多いのだ。
なので本屋で立ち読みすることを進める、5ページ読めたらそれはとてもいい兆候だから。
最後に
「面白く読めるとは何?」から始まり3つの特徴を解説してきた。
面白く読めるとは、つまり"感情"に沿っていること。
自分の身体的な感覚や、知能のテンポに合っているか。
本屋で本を手に取るときは、今度から直感で選んでみよう。
なぜなら自分に合う本はほとんどないのだから。
あとこんなチェックシート欲しいなと思いました。
twitterとかで投稿するツールにないかな…。
イメージ置いとくので見つかったらまた更新しますね。
(チェックシートイメージ)
たて2マス、横3マス
・タイトル ・空欄
・活字レベル ・○or×
・作者主観 ・○or×
・驚き ・○or×